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日本経済新聞で特集記事が連載されました。⑨就寝は共用の居間でも



東京の特養ホームに住んでみる⑨

認知症ケアの現場から
就寝は共用の居間でも
本人の気持ち重んじて

 ありすの杜南麻布南棟の特養で共用の食堂兼居間で寝てしまうお年寄りがいる。居間は入居者がテレビを見たり食事を囲んだりするところ。その就寝状況を見に行った。
 夕方6時 3階のユニット「ほの香」で10人のお年寄りが職員2人とテーブルを囲み夕食をとる。
 6時40分 夕食後の職員は、食事を作った遅番の大西佐千代さん(27)だけに。A子さん(85)が大西さんに両手を取られゆっくりと廊下に向かう。部屋の洗面所で入れ歯をはずし、「ここに入れときますね」と水の入ったコップを前に大西さん。
 7時 大西さんにパジャマへの着替えを手伝ってもらった後、部屋から居間に戻る。抱きかかえられながらテレビの前のソファに。小柄な五島範子さん(86)と茂木ヒロ子さん(85)も、やはりパジャマ姿で隣のソファにやってきて声を掛け合う。
 ほかの7人の入居者は自室に入った。テレビの音が聞こえ、明りが漏れる部屋が2つ。お年寄りの就寝時間はばらばら。「好きな時間にどうぞ」という方針だ。
 8時10分 ソファの3人に「いかがですか」と、大西さんが温めた牛乳を手渡す。
 8時15分 五島さんが「部屋に行く」と言い、大西さんに手を引かれ自室のベッドに向かう。隣室からB男さん(75)が車椅子で少し笑みを浮かべながら出てくる。
 8時25分 五島さんが素足で片手にスリッパを持ち部屋から廊下に。見つけた大西さんが駆けより自室に導く。居間に戻るとジーパンのポケットの携帯電話が鳴る。その部屋に行き「テレビをまだ見ますか」と尋ねる。再度電話で別の部屋に。遅番の業務の食器を洗う暇がない。
 8時50分 A子さんがソファで体を横たえ大西さんが上掛けをかける。「朝までここで休まれるので」
 A子さんは昨年5月末に入居し、深夜でも居間に出てくる日が続いた。自室から出たり入ったりするお年寄りは今も多い。特にA子さんは頻繁で自室ではどうしても落ち着かなかった。ひと月後にはソファが睡眠の定位置になる。
 「部屋より広くて誰かがいるのが気に入っているようです」と大西さん。規則や職員の都合より本人の気持ちを優先させるのがここでのケア。本人に何回も確認している。
 ソファで休むのは不安定のようにみえる。「部屋の方がいいのでは」とよく訪れる娘(45)は納得しかねる様子だが、これまで一度も床に落ちていない。入居者が職員を信頼し、職員の心配りがあるからこそできること。
 9時 夜勤者の川村文野(あやの)さん(21)が出勤し、大西さんから入居者の状態を聞き引き継ぐ。A子さんと五島さん、B男さんが日誌を書く大西さんに次々話しかけてくる。
 9時10分 A子さんがソファに戻って寝ようとするがなかなか目を閉じない。「起きとっていいですよ」と大西さんが小声で話しかける。他の2人は大西さんの声に応じて自室に。
 10時20分 A子さんが寝つく。食器を洗い終え、大西さんが帰途につく。

夜勤者数

ショートスティ利用者を含む入居者数に応じて基準がある。夜勤者1人に対する入居者数は、ありすの杜南麻布のような110人定員の個室ユニット型特養で20人。従来型の4人部屋特養だと25人。グループホームは18人。有料老人ホーム(特定施設)は、入居者数に関係なく1人の宿直者でいい。


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