私たちの想い
きのこグループは、1984年に日本初の認知症専門病院を開設して以来、多くの認知症の方々と向き合ってきました。1995年のスウェーデン訪問を機に、「グループホーム」や「ユニットケア」を導入。お一人おひとりに最適なケアをめざし、歩み続けています。
お一人おひとりが、
その人らしく暮らせるように
きのこグループのはじまりとなる診療所を開いたのが1980年。1984年には、日本初となる認知症の専門病院を開設しました。それまで放置されていた認知症の方やご家族の暮らしを救いたいという想いで立ち上がったのですが、前例がなく、手探り状態が続きます。転機となったのは、高齢者福祉の先進国、スウェーデンを訪れた1995年。そこで目にしたのは、認知症の方がごく普通に、あたりまえの生活を楽しまれている姿でした。
認知症に注目するのではなく、その人自身に目を向けること。個別ケアに切り替え、その人がやりたいことを一緒にやることで、利用者さんの気持ちが落ち着き、目的なく徘徊される人などが減っていきました。日本でも2000年に介護保険制度が導入され、その後、グループホームやユニットケアも制度化。認知症の人たちの想いや力を大切にする考えは、今では認知症ケアの基本として全国に広がってきています。
時代時代に応じて試行錯誤を繰り返してきました。一部の人間だけが推し進めてきたわけではなく、現場にいるスタッフ一人ひとりが考え、利用者さんにとって最適な答えを探し続けたからこそ今があります。その人がその人らしい生活をまっとうできるよう、支援していくこと。それが私たちきのこグループ共通の指針です。
社会福祉法人新生寿会 理事長
きのこエスポアール病院 名誉院長
佐々木 健
認知症は、その人がその人でなくなる病気ではありません
認知症は、ひとたび発症してしまうと、何もわからなくなり、その人がその人でなくなってしまう怖い病気である。そんな誤った認識がかつて広まってしまい、今なお「治さなきゃいけない」と焦ったり、「もう治らない」と落ち込んだりされる方もいらっしゃいます。認知症の問題点は、症状そのものではなく、そのために人間関係が悪くなってしまうことです。たとえば物忘れをすることで、周囲からとがめられたり、ご本人も引け目を感じて消極的になってしまったり。認知障害があるためにうまく生活に適応できず、コミュニケーションを断ってしまうことで孤立するケースも少なくありません。悪循環を断ち切るのに大切なのは、「不安をなくす」こと。忘れたってへっちゃらだって、ご本人はもちろんご家族など周囲の人たちにも安心してもらう。そして心穏やかに暮らしてもらうことを「あたりまえ」にしていくのも、私たちの務めです。
認知症ではなく、その人自身に注目する「パーソンセンタードケア」
きのこグループは認知症ケアのエキスパートではあるものの、認知症の方に特化した事業をしているわけではありません。専門の施設以外は、認知症のない方にも多くご利用いただいています。逆に言えば、私たちは認知症を特別視しているわけではないのです。軸足を置いているのは、利用者さんを中心にした「パーソンセンタードケア」。認知症があろうとなかろうと、まずはご本人の声をしっかりと聴く。そのなかで、たとえば認知症の方は、もう亡くなった方のことを生きておられるかのようにお話されることがあります。それを否定するのではなく、傾聴して、受容して、共感して、対応する。そういうことが自然とできるよう、日々、経験を重ねています。お一人おひとりにどんな背景があり、どういう人であって、何を大切にされているのか。その人自身を知ったうえで接するご本人中心のケアを徹底しています。
「自分たちで考えよう!」。コミュニケーションに答えはありません
私たちの研修は、まず利用者さんのそばに座っておくことから始めます。業務内容や介護技術から教えるのが一般的かもしれませんが、まずコミュニケーションを取ってもらう。その様子を動画で撮って自分でも確認してもらい、姿勢や目線なども含めて学んでいきます。
利用者さんが、何かをもどかしく感じ、つい荒っぽい言動に出てしまうこともあるでしょう。それをとがめるのではなく、まず、受け容れる。その一方で、原因をとことん考え、どうすれば穏やかに過ごせるか、諦めずに探り続ける。誰かに言われてやるのではなく、自分で考えて自分で行動することが、グループの伝統になっています。そのうえで、スタッフだけじゃなく、ご家族や地域も巻き込みながら、その人らしい暮らしをサポートしていきます。
グループの理念
認知症医療・介護の発展と
地域社会における豊かな暮らしに貢献する。
私たちは、常に
利用者個人を尊重し、尊厳を守る
認知症医療・介護における専門性の
確立と追求を行う
チームワークを高める
地域社会へ貢献する