スウェーデン研修報告 2014年9月~豊かな心を学ぶ体験記~
小山倶楽部施設長 下村 一真
スケールの大きさに圧倒
スウェーデンを訪れたのは2014年の5月の末。まず圧倒されたのは現地の人々の身体の大きさ!身長174cmの自分でも、便座に座って足がつかない…。初めて聞くスウェーデン語も不安で、すっかり心細くなったものです。
3ヵ月にわたる滞在期間は、サマータイム実施期間にあたります。待ちに待った長い夏を楽しもうと、戸外で太陽光を浴びながら、思い思いにのんびり時を過ごす「スウェーデン流」を目の当たりにすることができました。
研修は、ゴットランド島という小さな離島にある施設と、リンデスベリー(ストックホルムから鉄道で北に3時間ほど)の2施設の計3施設で行いました。
いずれの施設も広大な敷地内にあり、庭は美しく、内装はモダンで北欧らしさが感じられます。部屋は完全個室で、シャワー、トイレ、洗面台完備。キッチンつきの部屋もありました。広さは日本の施設の倍はありそうで、ゆとりある生活を送れそうです。
入居者からもスタッフからも感じられる「ゆとり」
入居者の過ごし方に特にスケジュールはなく、各々のんびり過ごしています。テラスで日光浴しながらウトウトされる姿は幸せそうでした。
スタッフは、プライベートと仕事をきっちりわける意識が高く、とても割り切っています。その一方で、一回のコミュニケーションに注ぐ力には驚かされます。明るい声かけにハグ。自然に出来てしまうのは欧米人ならではでしょうか。
また、緩和ケアの実践が進んでおり、どの施設にも実践者がいました。日常からマッサージなどで痛みの緩和、便秘予防に努め、安心感を与える事の大切さを痛感しました。
メールやSNSを活用 して言語の壁を越える
初めてのスウェーデン語と、小学生並みの英語力の自分にとって、言葉の壁は想像以上でした。不自由さをなんとかしようと、メールでのやりとりを提案。翻訳する時間が持て、理解力が向上しました。
また、スタッフは年代問わず多くがSNSを利用していたので活用。写真の共有など、交流面でかなり助けられました。
実際に現場でできたことは些細なものでしたが、スタッフの方々の暖かい指導と気遣いに助けられました。みんなが自分を必要としてくれている気持ちが嬉しく、感動しました。
認知症の正しい理解推進運動や研修会などにも誘ってもらい、どれも貴重な体験でした。こういった素敵な出会いは繋でいく事が大切。しっかりと育みたいと思います。
自分時間を有意義に過ごすスウェーデン生活を満喫
プライベートでは、仕事後の時間がたっぷり。仕事と家を往復するだけの生活が身に付いていたので、最初は時間をどう使えばよいのか戸惑いましたが、有意義に過ごせました。
ホームステイ先でも温かく迎えて頂きました。慣れない海外暮らしが苦にならぬよう、ホームパーティーやダンスクラブに誘ってくれたり、休日は観光名所やサッカー観戦に連れていってくれたり。サウナに入ったり、バギーで走ったり、ブルーベリー狩り、ザリガニ釣り。どれも素晴らしい思い出となりました。
いいケア、幸せな人生とは?研修から感じた「ゆとり」の重要さ
研修を終え帰国してから、改めて認知症ケアとは何か、幸せとは何かを考えています。
今の日本の介護現場の問題は深刻で、人員、時間、金銭共に余裕はありません。
認知症の方が安心して暮らすには施設増加、システム構築だけではなく、支える人も必要で大切です。スタッフがもっと心のゆとりをもって働ける環境であれば、今以上に人に優しく温かい関わりができるはず。いいケア、実践ができれば自然と楽しいやりがいのある仕事になり、そうなれば人は集まってくるはずです。
人は何のために生き、どう楽しく生きるか。ゆとりを感じるスウェーデン滞在中、そんなことを考えさせられました。日本でもこれからは、どう「楽しく」生きるかを、必死で考えるべきではないでしょうか。