タイからの「認知症ケアの実情視察」
きのこグループ 社会福祉法人 新生寿会 総社市山手福祉センター
『第14回アジア・パシフィック・アルツハイマー学会』(平成24年1月11日~13日開催)にて、きのこグループを代表して総社市山手福祉センター施設長の西谷達也が「日本における認知症ケア~きのこグループの実践~」について講演しました。
本講演内容について、タイの専門家の方々は大いに感銘を受けられた様子。講演後、日本の制度や施設整備について、多くの質問を寄せる姿は非常に熱心で、真剣そのものでした。
タイでも、社会の高齢化とそれに伴う認知症高齢者の増加は危惧されており、関心も高まっています。ケアの現状は、専門病院や老人保健施設、グループホームなどはなく、今からやっと在宅介護に向けたデイサービスなどを立ち上げようとしている段階。日本の約25 年程前の状況という印象です。
参加者から「ぜひ一度、日本に行ってケアの実際を見てみたい」との声もあがり、施設視察が実施されることとなり、平成24年12月13日、タイより医師4名、看護師1名が、総社市山手福祉センターへ視察に来られました。
ここでは、見学の様子をご紹介します。
1.歓迎レセプション
日本の「おもてなしの心」をお伝えしようと、和服を着用したスタッフによる「お茶会」で歓迎しました。タイの皆様は和菓子とお茶会の雰囲気に「great!」「delicious!」の声を連発です。
2.在宅ケアの実際と施設紹介および西谷施設長による講義
参加者全員の自己紹介後、施設長・西谷による講義が行われました。主にケアに対する理念と方向、その方法論について話されました。
3.施設見学
福祉センター内にあるサロン、デイケアサービス、ショートステイ、レストランなどを見学しました。
4.佐々木院長による講義
エスポアール病院の佐々木院長による認知症ケアに対する講義が行われました。
5.デイケアでの昼食風景の見学および昼食
デイケア利用者の方々の食事の様子を見学しました。日本でも最先端を行く考え方や取り組みが導入されており、参加者は一様に驚きと感銘を受けておられました。また、センター内にある一般向けレストランバイキングにて昼食を堪能されました。
6.自由見学
昼食後は実際のケアの様子を自由に見学していただきました。
7.交流会
見学後、センターのスタッフとの交流会を設けました。
タイの方々からいただいた質問や感想は次のようなものでした。
・「スタッフが楽しそうに仕事をしているが、どのようなスタンスなのか、どのように教育をしているのか」
・「時間がゆったり過ぎているように感じたがなぜそのような事が出来るのか」
・「食事やレクリエーションなどの個別ケアが先駆的である」
・「ぜひ、もう一度タイへ来て教えてほしい」
・「タイの病院スタッフにもここを見せたい」
最後に、当センターからイケメン隊による歌とオリジナルプレゼントを手渡し、視察は終了。
当施設のスタッフたちは、KSB(瀬戸内海放送)からのTV取材もあり、緊張していたようです。「これからの時代、英語は必須だ」とも感じたようです。
私たちのケアの基本は「利用者中心」。ご本人の思いや、その人らしさを大切に、豊かな暮らしや人生につなげられるようケアを行っています。一人ひとりのご希望にできるだけ対応できるよう、過ごし方を決めることなく、全てにおいてさまざまな選択肢を提示しています。ゆったりとした雰囲気、利用者それぞれがやりたいところでやりたいことをされている姿、スタッフの優しい笑顔と楽しげな表情に、タイの方々は大変感銘を受けておられました。
我々の取り組みを参考に、今回の経験がタイの在宅ケア進展の一助となることを願うばかりです。